時代に合わせて言葉も変える
数ある歩の手筋の中でも初心者に覚えてもらいたいのは「合わせ」「タタキ」「継ぎ歩」「垂れ歩」の4つです。これが桂、香の手筋となれば金銀や飛車角に両取りをかけて、駒を得するのが主の目的になります。相手の歩頭に捨てる桂香は、もう少し強くなってから教えるようにしましょう。

まず第1図はおなじみ「桂のふんどし」です。私が子どものころ、さすがにパンツが主流でしたが知識はありました。ところが今の子どもは「ふんどし」と言っても、そういう下着の存在さえ知りません。

そこで第1図のような両取りをY字アタックや、とくに女の子にはチェリーボンバー(桂の動きが、房が2つあるさくらんぼの形状に似ていることから)と呼んでいます。もっとピッタリくる言葉があればそちらを使ってください。

また桂は意外性のある駒、という認識を強くしてもらうために第2図を示しています。私が子どものころ、このテクニックを知ったとき、囲いに納まっている玉がいきなり詰むのにとても感激しました。美濃囲いにはこれしかねらわない時期さえあったほどです。自分の覚えた手筋が実戦で決まったときの快感は、将棋を続ける原動力となりました。

第3図は将棋用語で正しく言えば香の「田楽刺し」ですが、これも「クシ刺し」に置き換えています。現在の将棋のルールが確立されて約400年と推定されており、言葉が時代に合わせて変わるのも仕方ないと考えています。もし今の生徒が成人して、お酒でも飲めるような年齢になれば、自然に本来の用語を使ってくれるようになると期待しています。

その点「香は下段に打て」は実に分かりやすい言葉です。第4図で▲3九香と打てば利きが相手陣まで届いていることを示し「動けるマス目が多ければ多いほど、よく働いているということ。だから前に大きく動ける香は、下から打つといちばん活躍できるんだよ」と指導しています。

桂のふんどし、香の田楽刺しはいずれも駒を得するためのテクニックですから、玉・金・銀・飛・角に対してのみ有効であることを強調してください。

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