鬼斬がこどものころ愛読していた水島新司先生の「ドカベン」から月日が流れ、当時、明訓高校の主要メンバーがプロ野球界で活躍しています。 ちなみに山田→西武、里中→ロッテ、岩鬼→ダイエー、殿馬→オリックス(ピアニストはどーしたんだろ?)、微笑→巨人です。 シーズンオフとなり、上記5人は富士山の見えるホテルで明訓5人衆合同合宿を行いました。一日のトレーニングを終え、露天風呂につかりながら微笑が「夜は頭のトレーニングでもするか」と、話しています。 遊戯室で岩鬼−里中−微笑−殿馬の面子でマージャン、山田は一人で「楽しい詰め将棋」の本から問題を盤に並べて考えています。このとき表紙に有野(※1)の文字が見えることを見逃していけません。 山「持ち駒は金1枚、5手詰めか、5分で詰ませたら一級か」という問題が上の図面です。▲3三角成△同桂▲3二金△同馬▲1一飛成の正解を発見すると「3分だ、早いな」と声をかけてきた男がいます。 男「山田君、野球もうまいけど、将棋もうまいんだな。一局やるか」 山「は、はい…、でも本当にうまくないですよ、それでよかったら」ということで、2人の対戦が始まりました。 戦いは第1図となり山田が銀で「王手」をかけると、謎の男はうあおお、と大声をあげ「攻め始めると徹底して攻めてくるな(中略)さすがはライオンズの正捕手だ」と感心しています。 謎の男は「それじゃ、そろそろ攻めてみるか、山田の守りはどうだ?」と、一転して攻めまくったようです。そして謎の男が「王手」としたのが第2図です。 山「しかし一手あけばこっちの勝ちだ…、守り切れ、ああくる…、こうなる、だめか、それじゃ…終わったか、強い、…中略…いかにも苦戦しているよう遊んだ、かなりの力の差がなけりゃできないことだ」と心の中でしゃべっています。 そのとき、またもう一人、謎の男が登場し「おい神山だめだよ、山田君をいじめちゃ…中略…プロの五段とじゃ勝負になるわけないよ」 なんと山田と指していたのは元プロ棋士五段ながら、日本ハムファイターズにドラフト6位で指名された神山歩なのです。「今は元プロ、おれの力は五段が限界だったんで辞めた」そうなんですが、なんというキャラ設定なんだろ……。 山田はプロ棋士なんだから草野球ぐらいしかプレーをする場がない(そのとーり)と分析していますが、神山ってキングス(※2)のだれがモデルなんでしょう。今後の展開に注目です。 さて、まず5手詰め問題なんですが、確かに詰むものの歩余り(※3)なんですね。これ、なにかの問題で3四にあった歩を、そのままじゃまずいから3三に置き換えたと推測できます。 第1、2図とも他の配置と持ち駒が分かりません。第1図の▲4三銀は一見ただように見えますが、確認している配置以外の要素から、プロ五段が大声をあげるほど厳しい一着であることを評価するべきです。 しかし、その手つきは中指が銀の上方にありましたが、ひとさし指が中指のさらに上にあるんです。これは、あんまり駒あつかいに慣れていませんね。 第2図で詰まされたとはいえ、3八の自陣馬(※4)が目を引きます。第1図から猛攻を食っているわけですから、徹底的に受けたあとが感じられ、攻めと受けをチグハグにしない戦略はさすがといえましょう。 しかも5分で1級の詰め将棋を3分で解いているのですから(←原作を尊重します)、それ以上の評価を与えるべきと判断しました。ぜひ古田敦也選手(※5)とプロ野球界の名人位をかけて対局してもらいたいです。 ということで山田太郎 初段を認定 (※1)(※2)いずれもキングスで中核をなすプレーヤー。 (※3)通常、詰め将棋は正解手順で詰ませたとき、攻める方の持ち駒がないようする (※4)自分の陣地に馬(角が成ったもの)を引きつけること。防御がたいへん固くなる (※5)ヤクルト名人・王将の二冠を保持。確か三段の免状を持っている。 |