入門書に書いていない将棋のキホン


入門書などでは、駒の動きや成る、反則、王手と詰み、などの基本ルール教えた次は、いきなり手筋や戦法の解説に入るものも見かけますが、超初心のこどもには、まだ理解するのは無理だと思います。それよりも、将棋というゲームの本質を教えてあげる、ことが次のステップに進むための理解を深めます。

将棋は自分の国と相手の国が戦って、先に相手の王様(玉)をたおした(詰みにする)側が勝ちになるゲームです。しかし、第1手で、いきなり玉をたおすことはできません。少しずつ戦いを有利に進めて、小さいポイントを積み重ね、最後に玉をたおすのが、正しい戦いの進めかたです。

第1手から目ざすのは、攻撃部隊と守備部隊を作ることです。攻撃部隊とは相手の陣地を攻めるための駒。守備部隊とは自分の玉を守るために、金銀で城を作ることと考えていいでしょう。これが戦う準備をする「序盤」です。

攻撃部隊と守備部隊ができたら、いよいよ本格的な戦いがはじまります。最初の駒が戦闘配置についたとき、歩は陣地の境界を示すラインでした。それが、指し手が進んで歩が一歩一歩進出していくと、こんどは陣形の壁のような役割になります。戦いはまずお互い陣形の壁をこわし合うため、戦闘のはじまりは歩と歩がぶつかります。ここからが「中盤」になります。

中盤での戦闘は駒を成るのをねらう、駒を得するのをねらうの2つが大きな目的です。反対にいえば、相手に駒を成らせない、駒を損しないが大切なことです。ただし、駒の動きを覚えたての子は、ただ取られがひんぱんにおこります。これは駒の動きに目が慣れていないからです。

私はこれを将棋にも動体視力があるんだよ、と、プロ野球を例にとり150キロの速球でもバッターが打ち返すことができるのは、目が慣れているからだと教えています。これが女性なら「キャベツの千切りできるほうが、よっぽど不思議なんですが……」と言い、慣れの大切さを伝えています。

中盤が進んで、玉の囲いをくずそうとするあたりから「終盤」となります。終盤では、まず玉を守っている金銀を攻めることをねらいます。相手がちゃんとした囲いを使っていると、なかなか玉が詰ませることができません。

囲いを乱したり、玉を詰ませるには、駒の損得より、相手玉に迫るスピードが重視されます。たとえば、飛車のただ捨て→相手玉に無理やり取らせる→詰ませる、といった感じです。最大のターゲットである敵玉を倒せば勝ちになるので、もう駒の損得は関係なくなるわけです。

このように、将棋は相手玉を詰ませて勝つゲームです。しかし、駒の動きを覚えたてのこども(おとなでも)同士が対戦すると、王手見逃し以外は勝負がつかないのも現実です。

ねらいのない手というものは、強くなれば、なるほど存在しないのです。将棋とは

 序盤=@攻撃部隊と守備部隊を作る
 中盤=A駒を成るのをねらう B駒を得するのをねらう
 終盤=C囲いの金銀を攻める D玉の詰みをねらう

の5つが大きな目的になり、戦いがはじまった中盤からは守りとしてA〜Cを相手にさせないように考えるゲームです。細部的な手筋は、これからいろいろ教えていくとして、最初はこの5つの原則を知ってもらいましょう。

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