私の教室では飛車角の次は香を足していきます。本当のことをいえば、上手陣に香が加わっても、攻撃力も守備力も大きな違いがありません。 しかし既存の8枚落ちから6枚落ち(金2枚に銀2枚が加わる)は、上手の守備力が各段に向上するため、下手が勝つのは容易ではありません。上手の味方が増えても勝てるという意識を持ってもらうのが、この手合いの意味です。サンプル手順にも具体的な指導ポイントを書いてありますので、参考にしてくだい。 △3四歩に▲7六歩と突けない子が意外と多いです。その理由は△8八角成と角を入手されて、どこに打たれるか分からないと怖がるんですね。 そいうときは▲8八同銀と取って「ほら、こっちの陣地は打つところだらけだけど、そっちの陣地は、どこに打ってもタダ取りになるよ」と、大駒の交換こそ守備力の違いがいちばん生きることを示してあげましょう。 △3三角に▲2四歩△同歩▲同飛と指してきたら、理由を述べて▲2四歩を突く前まで局面を元に戻してあげます。 まだまだ、駒の動きを正確にするだけで頭がいっぱいですから、観想戦よりその場で正してあげるのが有効になります。もう少し強くなったら「待った」はいけませんが、この段階では仕方ないと考えています。 ▲4八銀と歩のラインを先に守り、△5四歩にどう指すかは作戦の分かれ道ですが、ここで私はおおまかに男の子と女の子で教え方を変えています。本手順の▲4六歩は積極的に攻める男の子バージョンで、女の子は▲8八銀から矢倉に玉を囲うように指導しています。 よく将棋の男女差を聞かれることがあるのですが、私は男の子は生まれながらにして戦士に要素を持っていると答えています。将棋は勝負のつき方が玉を倒すか倒されるかで、常に激しい攻防が必要になり勝つための戦い方を、男の子は本能的に分かっているのですね。 その点、囲碁は自分の領土を獲得していくゲームです。勝負の質として将棋よりおとなしいため、女の子の本能に合っていると考えています。そこで激しく戦うより駒組みを重視し、玉にお化粧をする感覚で陣形を整えていく指導をしているというわけです。 23手目△4二角に、もし自力で▲同角成△同飛▲5一角と指してきたら、すごい才能です。おそらく1年以内に初段になれます。 32手目▲4四歩で▲4三歩は△6四角と逃げられて▲4二歩成△同角で局面が戻ってしまうことを示し、歩は取るぞ、と打つのもいいけど、こんどは成るぞ、と打つのを覚えよう・次に4三へ歩が成れるように打ってみようなどのヒントを与え、垂れ歩のテクニックを教えてください。 垂れ歩はそうでもありませんが、歩をたたく、連打の歩など手筋とは捨て駒が大前提にあります。「相手に渡しても歩だからいいんだよ、これが飛車だったらもったいなくて打てないね。だから将棋は歩のテクニックがいちばん多いんだよ」と教えています。 以下の寄せ方は本手順以外にもいろいろあり、煩雑になるので割愛しますが、大切なのは出てくる局面局面で、臨機応変に指導者が課題を考えて生徒に与えることです。 たとえば50手目▲4二飛で「3二から打つと成るスペースがないね、離して打てば、ほら、成るスペースがある」など、生徒の立場になりポイントを抽出するのが大切です。 |